介護サービスの利用者は、戦前生まれから、徐々に戦後生まれへと移り変わりつつある。「娯楽が身近にあり、いろいろな選択肢から自分に合ったものを選んできた『イマドキシニア』に対して、画一的なサービスはあてはまりません」。そう話すのは、株式会社 SOYOKAZE 未来ビジネス推進本部 本部長の白木優史さん。「そよ風」ブランドでデイサービスやショートステイ、有料老人ホームなどの介護サービスを提供する同社は、主に1950年以降に生まれたシニア層を「イマドキシニア」と定義し、これまでの介護保険サービスに加えて、多様性のあるサービスの開発に取り組んでいる。
また未来ビジネス推進本部では、深刻な少子高齢化に直面するなか、健康寿命の延伸を目的とした高齢者施設や、介護保険と保険外のサービスを同一施設内で組み合わせて提供するリハビリスタジオなども展開する。変わりゆくシニアビジネスについて、白木さん、『マゼラン 湘南佐島』総支配人の稲葉淳さん、未来ビジネス開発部の中野駿平さんに話を聞いた。
介護施設を「行きたい場所」に
高齢者介護施設でのレクリエーション。その日は工作だったが、ある利用者は「やりたくない」と言ったという。
「戦前・戦時中生まれの方たちは、戦後もしばらくは食糧難のなかで生活をされてきた方たちです。多様な選択肢がない環境で我慢をすることや、わがままを言わないという価値観が自然に身に着いた世代です。そのため、画一的な介護サービスでも受け入れてくださる方が多かった」と白木さん。「例えば1950年生まれの方は、物心ついたときには高度経済成長期に入っていて、中学生の時には東京オリンピック(1964年)が開催され、それを機に一般にもテレビが普及しました。スポーツや芸能などの娯楽が身近にあり、海外からも文化や音楽、ファッションが入ってくるようになった。介護保険制度下の事業なので、いろいろな定めはありますが、そのなかでも個別性や専門性のあるサービスを提供しなければ、イマドキシニアの方たちに選んでもらえなくなるという危機感があります」