直木賞作家・辻村深月さんの最新長編を原作とした映画『この夏の星を見る』(2025年7月4日公開)。コロナ禍で制約を余儀なくされた学生生活を送る茨城・渋谷・長崎五島列島の3カ所の中高生にフォーカスし、自作の望遠鏡で星を見る「オンラインスターキャッチコンテスト」で互いに繋がり合う青春を描いた作品だ。
今回、溪本亜紗役で主演を務める桜田ひよりさんと、原作の辻村深月さんにインタビューを行った。2020年代初頭を舞台に「常時マスクあり」という撮影に挑んだ心境や、「映像化自体が難しいのでは」と思っていたという本作が完成しての原作者からの思い、さらにお二人が「かっこいい」と絶賛する名場面について語ってもらった。
コロナ禍が舞台「マスクつき」の難しい撮影
――まず辻村さんから、完成した映画の感想をお聞かせください。
【辻村深月】どの映像化でも、自分が書いたものが映像になった感動があるものなのですが、今回は冒頭のシーンから、その感動を超えてくるような迫力を感じました。まず、観終えたときの私の一番の感想が「かっこいい!」だったんです。感動や切実な思いや、そういうものすべてを包んで凌駕するかっこよさが、スターキャッチコンテストの場面をはじめ随所に溢れていました。出てくるキャラクター全員に拍手を送りたいです。
原作にない場面もすべて原作通りと感じられたのですが、それはおそらく監督やキャストの皆さんが原作を深く理解してくださりながら、彼ら一人一人の個性を大事にしてくださった結果だと思います。このチームに映画を託せたことを心から光栄に思っています。脚本の森野マッシュさんの感性もすばらしかった。
――桜田さんの演じる溪本亜紗はいかがでしたか?
【辻村深月】桜田さんの(亜紗の)目は、それだけで存在感がものすごいんですよね。実は私は、映像化に関して、この小説にはそもそもオファーが来ないんじゃないかと思っていたんです。その一番の理由が、2020年を舞台にする以上、俳優さんの顔にマスクをつけてもらわなければならない、ということでした。でも、今回のお話をいただいた際に、プロデューサーの方たちが「だからこそ挑みがいがある」と言ってくださったんです。その一言を聞いて、おまかせしようと思いました。