全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。
関西編の第102回は、京都市左京区の「み空」。銀閣寺にもほど近い疎水沿い、小さなビルの半地下にあって、文字通り“ぽっかりと空いた”ような空間は、どこか浮世離れした静謐さを湛える。「喫茶店に行く時は、“コーヒーを飲もう”というより、“ここでぼんやりしたいな”と思うことが多い」。そう話す、店主の石倉さんが、自身がくつろげる場を体現した店は、まさに街なかの余白と言うべき一軒だ。じっくりと染み入るような深煎りのコーヒーとレコードの響き、穏やかな時の流れが日常を忘れさせる。大らかな居心地のよさを醸し出す、巧まざる店作りの深意をうかがった。
Profile|石倉源太(いしくらげんた)
1990年(平成2年)、島根県生まれ。料理人として京都で勤める傍らコーヒーへの関心を持ち、独学で焙煎を続け、2021年にホルモン焼店の間借り営業で「み空」をオープン。2024年に現在地に移転し、独立店舗としてリニューアル。