ウォーカープラス

奈良公園の木々が色づきはじめ、ゆるやかに人の流れが続いていく。その先にある奈良国立博物館では、今年も「正倉院展」が開かれている。今年で77回目を迎える正倉院展は、年に一度だけ勅封が解かれ、宝物が一般に公開される秋の奈良を象徴するイベント。わずか2週間の開催とあって、関西エリアを中心に多くの人が訪れている。今回は報道内覧会に参加し、実際に感じた会場の空気と展示の魅力を紹介したい。


第77回 正倉院展は、11月10日(月)まで約2週間限定で開催中


1200年以上の時を超えて。正倉院ってどんな場所?


まず知っておきたいのが、「正倉院」そのものについて。奈良・東大寺の北側に立つ建物で、木のぬくもりが感じられる校倉造り(あぜくらづくり)が特徴だ。756年(天平勝宝8年)、光明皇后が聖武天皇の愛用品を東大寺の大仏に奉納したことが始まりとされ、1200年以上経った今もその姿を変えずに残っている。


館内に展示されている、正倉院の構造を紹介する模型


建物はヒノキを組み上げた校倉造りで、高床式の造りが湿気を防ぐ役割を果たしている。古の人々の知恵が詰まった構造だ。中には約9000件、点数にしておよそ1万点の宝物が収められており、絹織物や漆器、金工品、文書など、当時の文化や技術がいきいきと息づいている。その中には、シルクロードを通じて伝わった素材や技法も多いという。正倉院はまさに、東と西の文化が出合い、新しい美が生まれた“古代日本の交差点”。1200年以上前の人々の感性と知恵が、今も確かに息づいている。


  • 続きを読む