短編ホラーで意表を突く展開を描く三ノ輪ブン子さん。『貧女ハウスへようこそ』(小学館)や『実録怪談 本当にあった怪奇村/新犬鳴トンネル』(竹書房)など、鋭い視点の作品を手がけてきたが、今回は“いじめ”をテーマにした物語「メッ子とラレッ子」を紹介する。よくある「仕返し」型の物語とは違い、復讐以外の道を模索する物語を読みたい――。そんな思いから生まれたという。
いじめられた側と、いじめた側。再会がもたらす“ズレ”と緊張



主人公・綿貫すみれは、中学時代に四方山瑞樹らから「いじめのようで、いじめの自覚がない」扱いを受けていた。直接的な暴力も悪口もないため、加害者側はそれを“いじめ”と認識していない。一方ですみれに染みついた傷は深く、ある日、電車へ飛び込もうとした姿を瑞樹が目撃することになる。
間一髪で踏みとどまったあと、すみれが瑞樹向けた視線には「殺したいほど憎い」という強烈な憎悪だけが宿っていた。翌日からすみれは学校に来なくなり、二人の時間はそこで止まる。