
「既婚者と独身の壁」―—。学生時代には気にも留めなかったこの言葉が、大人になると急に現実味を増す。社会に出て働き、結婚や出産といったライフステージが変わるなかで、かつて同じ目線で語り合っていた友人たちとの距離が遠くなると感じる人も多いのでは?今回紹介するエピソードは、そんな“女の友情のこじれ”を真正面から描いた実話である。
価値観の変化がじわじわと友情を侵食する



仲良し女子4人組の一員だったゆき蔵は、学生時代こそ同じ温度で盛り上がれていたが、結婚・出産を機に少しずつ会話の輪から外れていく感覚を強めていた。唯一気兼ねなく話せたのが、同じアパレル勤務のTちゃん。サバサバしたタイプで、既婚者の中ではもっとも話が合う友人だった。
しかし、ある日の相談でTちゃんは荒れに荒れていた。職場スタッフが突然妊娠したことでシフトが回らなくなり、自分の不安を吐露する連絡が毎日届くという。「こっちの負担も考えてほしい!」と爆発するTちゃんに、ゆき蔵はただ黙って耳を傾けるしかなかった。