
右耳難聴や子宮内膜症、自身の体のことから家族の看取りまで、体験をコミカルに描いてきたキクチさん(@kkc_ayn)。書籍化もされたコミックエッセイ「20代、親を看取る。」では、母の自宅介護と別れをリアルに記し、大きな共感を集めた。その母を看取ってから2年。次に立ちはだかったのは、独り暮らしの父の異変だった。頼れる家族もいない一人っ子のキクチさんが、今度は父の“老いと病”に真正面から向き合うことになる。本作「父が全裸で倒れてた。」は、その始まりの瞬間を描くエッセイである。
連絡がつかない…胸騒ぎの先にあったのは、まさかの“全裸事件”



ある日、父と急に連絡が取れなくなった。普段は返信が遅いタイプとはいえ、ここまで静かなのはさすがにおかしい。母の看取りを経験しているだけに、嫌な記憶もよぎる——。
「携帯の通知に気づいていないだけかも」とパートナーは励ましてくれたが、平気を装いながらも、タクシーに揺られる時間がやけに長く感じられたという。最悪の事態を考えればパニックになる。だから「寝込んでいるだけかもしれない。まずは無事を確認する」と、想定を“最悪より少し手前”に留め続けた。