
「道路族」という言葉の認知度が急速に高まっている。これは住宅街の私道や公道を遊び場にし、騒音や器物破損などの迷惑行為を繰り返す子どもと、それを放置する親を指す造語だ。2016年頃に被害者による情報共有サイト「道路族マップ」が開設されたことでネットを中心に知られるようになり、2020年からのコロナ禍による在宅時間の増加が、この問題を社会的なイシューへと押し上げた。
今回紹介するのは、そんな道路族による騒音被害に悩み、次第に狂気へと駆り立てられていく女性を描いた漫画『ありふれた殺意』だ。作者の三ノ輪ブン子さん(@minowabunko)に、本作に込めた意図を聞いた。



「ピヤアアア!」窓の外から響く奇声に涙が止まらない
「ここは地獄だ」主人公の女性は、耳を塞いで床に伏せながら絶望する。彼女の自宅兼仕事場のすぐ外では、毎日決まった時間になると子どもたちの遊ぶ声が響き渡るのだ。「ピヤアアアアアアア」「キャアアアア」という甲高い奇声や笑い声は、窓を閉め切っても容赦なく侵入してくる。在宅ワーク中の電話相手の声すら聞き取れないほどの騒音。仕事は手につかず、蓄積したストレスは限界を超え、いつしか彼女の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。