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温泉大国としても知られている群馬県が、今、その注目度をより高めている。移住希望地ランキング全国1位、動画再生回数全国トップクラス、そして次々と生まれる新しい取り組み。その中心にいるのが、山本一太知事だ。今回の対談では、「知事という仕事」から始まり、観光、メディア戦略、エンタメ、IP、そして人材育成まで、山本知事の言葉を通して、群馬県がどのように「選ばれる場所」へと変化してきたのかを紐解いていく。聞き手はウォーカープラスの浅野編集長。行政とメディア、それぞれの立場からのやり取りを通して、今の群馬がどんな方向へ向かっているのか、その新しい魅力が少しずつ見えてくる。


※本取材は2026年1月5日に実施


群馬県知事の山本一太さん(左)とウォーカープラス編集長の浅野祐介(右) 【撮影=阿部昌也】


「知事」という仕事が、今“一番おもしろい”理由


ーーまずは一太さんが考える「知事」という仕事の醍醐味について伺いたいと思います。以前ご自身のブログで、「群馬県民の先頭に」や「多面的発光体として」といった言葉で表現されたこともありましたが、国政を長く経験された一太さんだからこそ見えている、知事という立場ならではのおもしろさがあるのではと感じています。


【山本一太知事】私は自民党で国会議員を24年間務めて、今は知事として7年目になります。国会議員と知事の仕事を比べたときに、一番違うのは、国会議員の本来の役割が法律を制定することにある、という点です。法律に基づいて世の中が動いていく。その意味では、そこには確かにおもしろさや醍醐味がある仕事だと思っています。


一方で、知事というのは、「現場のプレーヤー」なんです。群馬県民の先頭に立って、現場と直接向き合いながら、さまざまな事業を動かしていく。その実感という点では、国会議員時代のおもしろさとは全く違う、仕事の醍醐味や重圧、やりがいがあります。これは、正直、比べものになりません。


ーー国の制度設計とは違って、判断の結果がすぐ現場に返ってくる。そのスピード感こそ、知事という仕事のリアルなのだと感じます。


【山本一太知事】私が6年半前に知事になったタイミングが幸運だった理由のひとつは、当時、知事という存在が、今ほど注目されていなかったことです。全国知事会も、一時期は「改革派知事」が地方から政治改革を発信する存在として注目されたことがありました。決して規模の大きくない自治体の知事が脚光を浴びた時代です。ただ、その後は、知事会全体としての存在感は薄れていきました。


ーー注目のピークを一度迎えて、そこからあらためて役割が問い直された、という流れですね。


【山本一太知事】そうですね。ところが、コロナ禍をきっかけに状況が一変しました。未曾有の危機の中で、国と地方の役割分担が明確でない場面も多く、各知事の判断が、極めて重要な意味を持つようになった。その結果、知事会にも一気に注目が集まり、存在感が大きく高まったわけです。


ーー知事という存在の見え方そのものが変わった印象があります。


【山本一太知事】だから今、知事という仕事は本当におもしろい時代に入っています。私は昭和33年(1958年)生まれで、いわばネットで言えば“石器時代”の人間ですが、この10年、特にこの6年ほどで、デジタルやインターネットの環境は大きく変わりました。地方にいながら、グローバルな動きや情報に直接触れられる時代になったんです。


【写真】33階建ての群馬県庁舎は、153.8メートルで道府県庁舎として日本一の高さを誇る 【提供画像】


ーー地方にいながら、世界と同時に情報を受け取れる感覚ですよね。ご自身の知事としての強みはどんなところにあると思いますか?


【山本一太知事】まず、24年間国会議員を務めてきた中で築いた政府との人脈があります。さらに東京に近いという地理的な好条件もある。知事である私の交渉相手は、ほぼ大臣クラスになります。


ーーご自身の強みと、群馬ならではの距離感をフル活用しているわけですね。


【山本一太知事】はい。加えて、デジタルを活用し、地方からでも多様な発信ができる。これまでアクセスできなかった情報や人にもつながれる。知事という仕事のダイナミズムや可能性は、明らかに広がっています。そう考えると、このタイミングで故郷の群馬に戻り、現場のプレーヤーとして知事をやっていることは、本当によかったと思っています。


ーーその実感が伝わってきました。ありがとうございます。


届け方を変えたら、群馬は動き出した


ーーSNSの活用など、ご自身でも強力なメディアで発信を続けられていて、県として動画・放送スタジオ「tsulunos(ツルノス)」も非常にうまく活用されていますよね。行政が自らここまで発信に力を入れている例は、あまり多くない印象があります。一太さんは、今の時代における観光の魅力や地域の価値を、どのように届けるべきだと考えていらっしゃいますか?


【山本一太知事】観光や地域に限らず、今は情報発信全般に言えることですが、いわゆるオールドメディアよりも、ネットメディアの影響力が日々大きくなっていると感じています。若い人はテレビをあまり見ませんし、実は私自身もほとんど見ていない。ニュースもYouTubeでチェックしますし、BBCやCNN、NBC、Foxニュースまで全部見られる。そういう時代ですよね。


tsulunosのスタジオで対談が実現した 【撮影=阿部昌也】


ーー情報にたどり着くまでの導線そのものが、世代ごとに全く違ってきていますよね。


【山本一太知事】つまり、テレビをほとんど見ない環境の中で、ネットの発信力が急激に広がっている。だからこそ、デジタルを使った情報発信が、今の時代の主流になってきていると思っています。


ーー行政側が、その変化をしっかり前提に置いているかどうかは、大きな差を生みそうです。


【山本一太知事】今は47都道府県それぞれがネット動画チャンネルを持ち、登録者数や再生数を競い合っています。特にコロナ禍を通じて、動画の重要性はあらためて強く認識されました。そうした中で、群馬県の動画の再生回数は全国トップクラスです。2023年度は約4000万回、2024年度は約8000万回となりました。行政の公式チャンネルとして考えると、かなり異例の伸び方です。


ーーかなり異例の伸び方ですね。


【山本一太知事】そのうち約2500万回はぐんまちゃんが稼いでいますが、残りの約5500万回は、YouTuberやインフルエンサーとの連携もありつつ、基本的には職員が中心となり回している。これは本当に新しいビジネスモデルだと思います。


群馬県公式動画チャンネル「tsulunos -ツルノス-」 【提供画像】


ーー県独自できちんと運用できるチームが育っているのは大きいですね。


【山本一太知事】はい、大きいと思います。こうしたネット発信力の強化は、群馬県の勢いにもつながっています。2024年の「移住希望地ランキング」で全国1位を獲得できたのも、その象徴です。王者だった静岡を抑えての1位でした。


ーーメディア側から見ても、「群馬が1位」という結果そのものがニュースになっていました。


【山本一太知事】実は、これもネット動画の発信力にかなり支えられていると思っています。観光の魅力をどう伝えるかは、口コミもありますし、ウォーカープラスのようなメディアの力も大きい。


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