
結婚して間もなく赤ちゃんを授かったA子さん夫婦。しかし、出産を目前にしたある日、A子さんは激しい頭痛に襲われ、病院へ緊急搬送される。診断は「重度の脳出血」。医師から旦那さんへ告げられたのは、「治療の術はなく、数日以内に亡くなる可能性が高い」という、あまりにも過酷な現実だった。母体が失われれば、赤ちゃんの命も守れない。緊迫した状況のなか、赤ちゃんは急きょ帝王切開で取り出され、A子さんは血圧を維持しながら、かろうじて生をつないでいた——。
命をつなぐための、看護師の判断



極限状態にもかかわらず、A子さんの身体からは搾乳が追いつかないほど母乳が分泌されていた。「どうにか赤ちゃんに会わせてあげたい」。そう願った看護師は、赤ちゃんをコットに乗せ、A子さんのもとへと急ぐ。寝たきりのA子さんと、産まれたばかりの赤ちゃん。短い時間ではあったが、ついに家族3人がそろう面会がかなった。その直後、A子さんは静かに息を引き取る。看護師は、きっとA子さんは赤ちゃんに会うため、最後の力を振り絞って生き続けていたのだと感じたという。