120年以上の歴史を持つ老舗文具メーカー、ZEBRA(ゼブラ)。私たちが普段から何気なく使っているボールペンの数々を生み出してきた同社が、5万円を超える最高級の油性ボールペン「THE ZEBRA HAMON」を発売した。
なぜ今、これほどの高価格帯に挑んだのか。そこには、日本のものづくりへの尋常ではない執念と、書き手に対する深い愛情があった。開発者である研究本部のシニア・プロフェッショナル中田裕二郎さんに、その誕生秘話を伺った。

圧倒的な存在感を放つフラッグシップモデル「THE ZEBRA HAMON」
2026年3月4日に発売された「THE ZEBRA HAMON」は、ゼブラが社名を冠して立ち上げた最高峰ブランド「THE ZEBRA」の第1弾モデルとなる油性ボールペンだ。価格は5万9400円。これまで海外ブランドが主流だった高級筆記具市場に対し、120年以上にわたり筆記具と向き合ってきた日本メーカーならではの視点と技術で切り込む、まさにゼブラの「集大成」といえる一本である。

本体には軽量なアルミ軸を採用。枯山水や水面の波紋を思わせる美しい模様は、1個につき1時間以上かけて作られ仕上げられているという。作動機構にはツイスト式(回転繰り出し式)を採用。ペン先を出すとクリップが連動して沈み込むギミックや、インク残量が確認できる透明窓など、過去のヒット商品で一世を風靡した機能が洗練された形で搭載。
さらに、書き味を左右する中芯には、開発に9年半をかけた最新の油性インクを採用。黒の中に若干青みを感じる「黒墨色」のインクが充填されたこの芯は、社内のマイスター制度で認定を受けたわずか3名のスタッフが、1本1本手作りで生産するクラフトマンシップによるもの。ペン先には初めから滑らかな書き心地を味わえる「エイジングチップ(慣らし加工)」が施されており、手にした瞬間から究極の書き味を堪能できる。
往年の名機能と日本らしさを体現した「波紋」デザイン
ーーまずこの「HAMON」の特徴について伺えますでしょうか。
【中田裕二郎】日本の最高を作りたい、ということで進めてきたんです。基本的には油性のボールペンなんですけれども、回転繰り出し式になっています。ちょっと手に取ってみてください。

ーーあ、触ってもいいんですか?
【中田裕二郎】もちろんです、筆記具なのでぜひ触ってみてください。
ーー(触りながら)ペン先を出すとクリップが下がるんですね。すごい。
【中田裕二郎】回転繰り出し式でペン先が出ます。その時にクリップが下がって、お辞儀してくれて、書く時に邪魔にならないようになっているんです。過去に私たちが手がけた、一世を風靡したようないろいろな機能をどんどん結集したいと考えました。
クリップでしたら、後端を押すタイプの「バインダークリップ」。こちらも高級品として継承したいなと。あとは、1960年代にうちが初めて透明の軸を採用し、「インクが見えるのに書けなくなったら無償交換します」というキャンペーンで一世を風靡した「みえるみえる」というキャッチフレーズで売り出した商品があったんですよ。その機能も高級品にふさわしい形で初めて透明窓を採用したいと考え、小型の窓を設けることで、インクの減りがわかるようにしてみました。

ーーインクがなくなってくると、透明なところがわかってくるという形なんですね。
【中田裕二郎】1966年に透明軸でインクの残量がわかる仕組みを弊社が最初に開発しまして。その後も「シャーボ」や、バインダークリップを搭載した「サラサ」など、我々の主力となっているロングセラー商品があるんですよね。そういったいろいろな技術や経験を踏まえ、全部を集大成として形にしたのが今回の「THE ZEBRA」というわけです。
ーーこの「みえるみえる」のボディの部分はプラスチックになるんですか?
【中田裕二郎】ボディの透明な部分には、高透明材の中でもスマートフォンのレンズカバーなどに使われるポリカーボネートを使用していまして。万が一落下させたときに一番力が加わる部分なので、強度にもこだわっています。
ーークリップのギミックについてですが、作動時にも工夫があるそうですね。
【中田裕二郎】クリップが上がるときに、通常はポコッと上がると(そのクリップが埋まっていた位置に)大穴が開いたままになってしまうものが多いんですけど、これはシャッターみたいなカバーがクリップと一緒に上がる構造になっているので、大穴が開くのを防いでくれるんです。ゴミなどが入っても影響しないように、一緒にせり出す仕組みにしていて。