日本の65歳以上の人口は30%に迫り(※)、生まれてから死ぬまでの「平均寿命」と自立して暮らせる「健康寿命」の間には約10年ものギャップが生じている。
※総務省統計局 令和7年9月14日「統計からみた我が国の高齢者」
介護や手助けが必要となるこの不健康な期間をいかに短くするかは世界共通の切実な課題だ。病気になってから治療するのではなく、毎日の習慣で未然に防ぐ「予防」こそが、今最も求められている。
このような老化研究で今、注目されているのが、私たちの食卓でおなじみの「本わさび」だ。刺身や蕎麦の脇役であるこの日本古来のハーブには、老化の根本原因を抑制し、脳のパフォーマンスまで向上させる驚くべきパワーが秘められているという。
鍵となるのは、本わさびから抽出される希少な健康成分「ヘキサラファン」。この身近な食材が、いかにして私たちの健康寿命を延ばすのか。
今回は、最新科学をライフスタイルへ昇華させるプロであるNOMON & Co.株式会社の山名慶さんと、わさび研究の第一人者である金印株式会社の奥西勲さんに老化抑制研究の最前線を聞いた。

寿命の壁に挑む。万病の元「慢性炎症」を食い止めよう
――現代の日本が抱える「老化」の問題と、最前線の研究について教えてください。
【山名さん】ニュースなどでも周知の通り、日本は、男性の平均寿命が約81.09年、女性は87.13年と世界に冠たる長寿の国です(※1)。私が子どもの頃だった1970年代は、65歳以上の高齢者は人口の7%程度でしたが、今や30%に迫ろうとしています。
※1:厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表」より
ここで問題になるのが、健康寿命と実際の寿命の間にある約10年のギャップです。平均寿命が75歳程度の国であっても同じように10年の差があり、世界共通の人類の課題なのです。
医療は発達していますが、病気になってから治す手段だけでは、この10年間を健康に過ごすことはできません。私は20年以上にわたり創薬の分野で薬を開発してきましたが、新しい薬をいくら作ってもこの社会課題は解決されないと痛感しました。
病気を持ったままどうにか寿命を延ばす処置ではなく、病気にならないためのテクノロジーを日常に落とし込むことが重要なのです。

――日常的な予防が、結果的に医療経済の課題解決や個人の負担軽減にもつながるのですね。
【山名さん】その通りです。現在、世界中で老化分野に巨額の投資が集まっています。たとえば、Amazon創業者のジェフ・ベゾスが老化抑制のスタートアップに30億ドルもの資金を投じたり、OpenAIのサム・アルトマンも個人で1億8000万ドルを出資したりしています。